石井 慎一さん(石井農園)
小松菜といえば茹でたり炒めたりする調理が一般的。生で食べるなんて、えぐみが強くて不向き、と思われがちですが、そこは小松菜のふるさと江戸川区。生でいただける『サラダ小松菜』が名産となっています。
生産している一人が、石井農園の石井慎一さんです。
「15年以上前の話になりますが、それまで生食の小松菜はありませんでした。そこで江戸川区農業経営者クラブが生食の安全性について、
弘前大学に依頼して1年間かけて調べてもらったんです。その結果、問題ないことを確認し、これがきっかけで『サラダ小松菜』を売り出そうということになりました」
『サラダ小松菜』は特別な品種ではなく、収穫を早めたもの。若菜はえぐみが少なく柔らかいため、生で食べることができます。とはいっても、作り方にはそれなりの工夫があると石井さんはいいます。
「農家さんによってさまざまだとは思いますが、私の場合は種をまくときに間隔を狭くしています。そうするとあまり太く育たないので、茎が細く口に入れやすいものが栽培できるんです」
収穫は毎朝。新鮮なものを新鮮なうちに袋に詰め、篠崎駅直結の『しのざき文化プラザ伝統工芸カフェ・アルティザン』へと出荷。そして、その日のうちに店頭に並びます。
このルーティンは季節に関係なく、土曜日以外の毎日。そうなると気になるのが畑の状態です。周年栽培において、どのように土作りをしているのでしょうか。
「1年に一度、冬前の11月に堆肥を入れるようにしています。私は農家の8代目で、200年以上前からこの場所で生産しているのですが、科学的なものではなく、なるべく有機的なものを選んだほうが、長く農業を続けていくには絶対にいいと思っています」
今、石井さんにとって最も悩ましいのが昨今の温暖化現象。小松菜栽培においても大変な影響を与えているといいます。
「温暖化によって、1年を通して害虫の生息期間が長くなっているんです。今までだと11月や12月になればいなくなっていましたが、近年は1月に入っても生き残っています。2月になってようやくいなくなり、ホッとする間もなく3月の初旬くらいからまた発生し出すんです」
害虫はビニールハウスで栽培していても、隙間を見つけて入ってきます。小松菜は虫に食べられやすい野菜でもあるので、現実問題、最低限の農薬散布は致し方なしといったところだそうです。ただ、それにもなるだけ頼りたくないため、殺虫灯も設置しているといいます。
そのような中で生産された『サラダ小松菜』は、どのような食べ方がオススメなのでしょうか。
「肉料理や揚げ物に添えて、お口直しで食べるとさっぱりしていいのではないかと思います。もちろん、キャベツやレタスなどいろいろな生野菜とミックスしても、シャリシャリとした食感が楽しめておいしいですよ」
江戸川区産だからこそ生で食べておいしい小松菜があります。他県ではほぼ目にしない『サラダ小松菜』にますます注目が集まりそうです!
(ライター:滝沢ヤス英)